二十四気導引座功

『陳希夷先生二十四気導引座功』は、明代の道書『遵生八箋』に初めて登場した。
この著者高廉が、宋初の著名な道士の名を冠してオマージュ作品としたのである。
かつて神仙道の行法であった導引は時代を下って、医学と結びつき、
季節の変遷で心身の不調を来しやすい市井の庶民へ手渡されたのである。

福岡気功の会では2015年10月に、これまでの研究をまとめて
同名のパンフレット(B5版60ページ\1000)を出版したが、
ここでは原典を解説しながら、その全貌に触れてみたい。
このページの初稿は2012年。16年に若干補正した。

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 立春正月節座功

りっしゅん。新暦2月4日。旧暦12月24日。


立春と旧正月は、いわば一心同体で、初春そのものである。立春の前にはめったにポカポカ陽気の日和がないことを古人はよく知っていたのだと思う。
寒緋桜と競うように梅が咲き、もうすぐ、ほんとの春がやってくるぞと人は感じるのだろう。
  両手で腿を押さえ、腿と反対側に胴体と首を捻る。左右交互に15回。


風邪が長引いて、頭、耳の後、肩、肘などが痛い。



次節と合わせて同じ動作。背骨への刺激と見る。背骨を弛めて、排泄を促進するの意か。 
 雨水正月中座功

うすい。新暦2月18日。旧暦1月9日。


雪が雨に変わってくる季節と。
今年は、寒く、まことに春は名のみである。鶯はまだ。めじろは梅の香に誘われて戯れている。ヒヨドリは、声を限りに鳴いている。 
   前節の導引と同じ。
左のイラストとその下のイラストを比べてみよう。手の置き所は確かに違う。立春は大腿であり、雨水は鼠蹊部である。とはいえそれが決定的な違いだろうか。
そんなわけない。
まして、雨水になったとたんに三焦経に邪毒が停滞して汗が出るなどということが起きたりしない。



だいたい、このイラストがテキストによって取り違えられたりしているのだ。脚の付け根、腿の中ほど、膝の三ヶ所を両手で押さえ、上体を伸展させ、頸を伸ばしてから右へ捻転、ゆるめてもとに戻してから左へ捻転するとよい。背骨が弛む。
  啓蟄二月節座功

けいちつ。新暦3月5日。


三寒四温の季節。南国では河津桜だ、土筆だ、白木蓮の蕾が…と明るいたより。北国は、最高気温が氷点下の真冬日だ、吹雪で列車が立ち往生だなどと。
福岡あたりだと、もう冬も戻れないところまで来たかと思うことが多い。雨の量も、増えている。
蟄居の蟄。啓蒙の啓。ドアを開けて蛇や蛙が出てくる。
   拳を握り、頸をねじる(後を向く)と同時に肘を折って後方に素早く引く。30回。

適応症の項を見ると、背すじ・肺・胃に邪毒滞って目の黄染、口乾き、鼻血、喉の痛み、喉つまり、嗄れ声、頭痛、歯周炎、嗅覚鈍麻、できもの、目眩み…などを治すと。

肝臓・副交感神経の異常。春たけなわならではの症候群。
 春分二月中座功

しゅんぶん。新暦3月20日。


今年の春は早いのか。福岡では桜の開花が13日。平年より十日以上も早い。すでに五分咲きの木も。七十二候では春分の初候で「雀はじめて巣くう」次候で「桜はじめて開く」とある。つまり新暦で25日ごろに開花することになっているわけで、今年の先走り傾向は異例である。
先週末は札幌。こちらはこちらで例年にない大雪で、脇道に入ると大人の背丈ほどの高さの融け残った雪が壁のようにそそり立っていた。北と南で気温差20度。
   両手を伸ばし、顔は後を向く。そこで左右の手を交互に引くこと42回。

胸肩背の気脈が虚労のおり邪毒に冒され、歯痛、頸の腫れ、鳥肌、腫脹発赤、耳鳴り、耳の後・肩背・上腕外側の疼痛、痛みを伴わない皮膚の硬化、掻痒。


三焦経ないし胆経異常の症状か。
動作の焦点も、前節と類似している。
 清明三月節座功

せいめい。新暦4月5日。


今年の桜はすでにすっかり散り果て、各校の入学式すでに葉桜。…の中、もこもこの八重桜が私が主役!という感じで咲いていて好ましい。
中国では清明節の休暇。墓参の日であるとか。その影響下にあったか、沖縄もしーみーと呼んで、この日を祝う。

一年前、この清明からスタートして、つまりできそこないの一周年。できそこない、とはその後数回にわたってさぼったからで、真の一周年まで、祝いは預けることにしたい。
   これこそ、《左右開弓》。立式八段錦の原像である。56回。


腰・腎・胃腸が邪に冒されて停滞し、耳の前・喉・頸・肩・腕…が痛い、動かせない
などと。


この、左右開弓勢は、胸を開閉する運動ということで肺経、目を用いるので肝経への補法であるとされている。

仮の一周年だから言わせてもらえば、納得できる説明とできないのと、その割合は大目に見て七:三だな。少なくとも、三割8本は、でたらめ、いい加減。古典はおおよそそんな程度だと思って、マユツバで取り組むと、味わい深い。
 穀雨三月中座功

こくう。新暦4月20日。


寒暖の差が大きい。
北海道は雪。九州は夏日(気温25℃以上)。かと思えば札幌9℃、福岡10℃という具合に。
しかし、鰹はまだだが、目に青葉、山ほととぎすだ。あと数日もすれば、春というよりは初夏の風情となろう。
舞鶴公園の芝は、今たんぽぽに占領されている。そして、つつじは盛りで、藤も鮮やかな青紫の花が咲き誇っている。早い。
   端座して左右の手を交互に押し上げる。もう一方の手は対側の乳房を覆う(大胸筋の付け根を押さえる)。35回ずつ。

脾胃にしこり。?血。目の黄ばみ。鼻血。耳下腺および下顎の腫れ。上肢外側・後側の腫れや痛み。臀部外側の痛み。掌の熱感。


これは、肝胆と、脾胃の失調。
 立夏四月節座功

りっか。新暦5月5日。


この時期が日本列島の北と南ではもっとも季節感の開きが大きい。
つい先日、北海道では雪が舞った。札幌あたりでようやく桜が満開になる。北国ではようやく春なのだ。南国では、完全に夏の気配だ。ちなみに2日が立春から数えて八十八日目の、八十八夜。夏も近づく…である。ついでに七十二候を覗くと初候でかわずはじめて鳴く、次候でみみずいづる、末候でたけのこ生ずと。
みなさんの地方ではいかがか。
   息を止め、目をつむる。左右の膝を手を組み替えながら引き寄せること各35回。

(またまた風湿の邪が…)
で、腫脹疼痛、上肢の痙攣、腋窩の腫脹、手掌の熱感……そして「笑いが止まらない」とある。


笑いが止まらないというのは、もちろん身体症状である。おかしくもないのに笑ってしまうわけで、当人は苦しい。これは中胚葉異常、さらに言えば心気異常だろう。
たぶん鍼灸では一発で治せる症状である。もしわかったら、ここに書き足そう。
小満四月中座功

しょうまん。新暦5月21日。


豊年満作、の満。ここまで来たら(つまり季節が順調に進んできて)今年の作柄はまあそこそこだろう…という予感の満。その、踊り場感が小満。その象徴としての夏の暑さ、蛙の鳴き声。紅花。梅の実。そして゛麦秋。
もうすぐ「夏は来ぬ」の歌詞にふさわしい季節がやってくる。今は、風薫る時。
今年は、九州では、季節の進行が速いようだ。あやめが咲き、蛍も夜風に舞い始めた。 
   端座。片手を挙げ、もう一方の手は下に押す。交互にくりかえすこと15回。

肺に邪毒が停頓して胸の閉塞感、痛み、動悸、鼻の発赤、顔面紅潮、目の黄ばみ。


なぜ、この初夏の季節に胸に苦悶感が現われるのか。
この動作は、調理脾胃の典型であるが、挙上側の肋骨を開く形、按側は逆に縮める形なので、胸郭を揺さぶるわけだ。
肺にも効く…というより、内胚葉系を調律する導引であると考えたい。
 芒種五月節座功

ぼうしゅ。新暦6月5日。


芒は稲科の植物の種を包む殻にある穂のとげ。
この季節は麦秋でもある。そして田植えの始まる季節。雑節では芒種と夏至のあいだに「入梅」を挟んで田に水を引くころとする。
   立ってのけ反り、両手を交互に突き上げること35回ずつ。


腎腰の疲れ。喉の渇き。心痛。目の黄染。側胸の疼痛。
よく笑い、よく驚き、よく忘れる。
咳、嘔吐、放屁、微熱。股関節痛。

この姿勢を取りづらいのは、どういうときか。
@喉から下の胸腹部の筋層が縮んでいる。A背筋力の減退。肩甲骨が肋骨に貼りついている。
これらの動きの焦点は、みぞおちの裏すなわち夾脊である。夾脊〜肩甲骨〜肩関節のラインが寸断されていると見る。経絡的に翻訳すると、肝・心の不調。筋肉で見ると、菱形筋と肩甲下筋。
この体操の要領は、鳩尾から上を反らせる。鳩尾の下はしっかり立つ。胸板を天井に向けるつもりで構え、天井を壁に見立てて左右交互に押すようにすることだ。
 夏至五月中座功

げし。新暦6月21日。


日の出から日の入りまでの時間が1年でもっとも長い日が夏至。
その夏至から16日間に修するにふさわしい導引座功。  
   脚を折って座る。
手を伸ばして指を組み、片足を持つ。
その足を踏み伸ばす。左右交互に計70回。







膝の裏を伸ばし、アキレス腱を伸ばす。腰を折る。腎を固め、膀胱経を伸ばす運動である。

梅雨に入り、湿度の高くなる季節では皮膚が詰まって体内の「水」を循環させることができにくくなって、足腰を冷やしてしまい、身体が重たく感じられる。これを「風湿の邪が滞る」という。
小暑六月節座功

しょうしょ。新暦7月7日。


つぎの大暑と合わせた31日間は「暑中」である。1年中でもっとも暑い季節という。
例年梅雨のさなかのこの時期、今年は早々と明けて真夏の暑さが容赦なくこの先3カ月続くとなると、さて身体はどうなるのか。
クマゼミが鳴き始めて(7/1)いよいよ暑中見舞いが時宜に叶った挨拶となった
    両手を後ろ手に床につけ、長座。
片足を折り、その足に体重を乗せて圧する。
もう一方の足は伸ばして踵を床につけたまま突っ張り、さらに上体をのけぞらせて両手で姿勢を支える。
こさを左右交互に15回。



足腰の渋り。のどの痛み・咳・くしゃみ。身体が重い。手のひきつれ・腕に力が入らない。半身不随。脱肛。
健忘、情緒不安定。

…と「適応症」の項に記載あり。夏至のころから風湿の邪気が身体を冒すままにしておくと、そこまで進んで身体を壊すぞと。
夏至の「病状」は、膀胱経だが、この小暑になると、胃経にまで広がる。
片足を畳む、もう一方は伸ばす。これは胃経の屈伸運動。
  大暑六月中座功

 たいしょ。新暦7月22日。


 次節はもはや立秋である。その前の18日間は夏の土用である。つまり、7月19日が土用の入りだった。
今年は丑の日が2回。しかしウナギは高い。高すぎる。白焼きが2000円もする。うまそうな蒲焼はスーパーで買っても2500円。とても手が届かない。まして鰻屋でだなんて。
ということで鰻屋は早晩店をたたまざるをえなくなるであろう。

トップページに《ニューバージョンの大暑功》をアップしました。
   両手拳にして膝の前の床を突き、首を捩じって肩に引き寄せ、鋭く虎視。左右交互に15回。







発汗に乗じて風邪が心奥に侵入して腎を冒すか。愁えて泣きたくなると。頻尿または尿閉。便秘または下痢。悪寒発熱、口渇。放心健忘。


王滬生老師の「養生精髄十二式」朱雀剔羽と同じく、芯の邪を抜く。頸を強く捩じりながら伸ばす。
 立秋七月節座功

 りっしゅう。新暦8月7日。


とりあえず、残暑お見舞い申し上げます。
 福岡あたりだと、このくそ暑いのに何が秋だという声ももっともと思う。が、この二十四気の配当は「熱」を基準にしてはおらず、「光」を基準にしている。そして、思うには、夏は北方の、冬は南方の季節感に沿っている。
 たとえば北海道では、この立秋を境にぐんと秋の匂いを濃くする。夏休みは18日で終わり、翌日から二学期になる。八月中にストーブの火をつけるところもある。
   (この図だと)正坐で、両手を膝の前の床に着いて、体を縮め、息を止めて、飛び上がるように体を上に突き上げる。56回。

適応症の項には
これは虚を補う、と。また、腎腰の滞留せる気を除く、と。口が苦いとあるから心臓の弱り。目尻、腋窩、足の外側などに違和感とあるからこれは胆経異常の証であろう。

胆経異常とは副交感神経異常。それを猫背運動で解消を狙うというのだから、交感神経への刺激である。
暑さでたわけてしまった心身に気合を入れるということか。 
 処暑七月中座功

  しょしょ。新暦8月23日。


 暑さも一段落してしのぎやすくなる季節、という意味の節気だが、どうしてどうして、九州あたりでは熱中症に気をつけなければならない暑さである。
ちなみに初候「綿の花開く」次候「天地はじめてさむし」末候「こくものみのる」と。
季節が一気に転換する気分がよく象徴されている。 
    このイラストは、いただけない。
両手を背中に回してどんどんと叩いている図のつもりで、気持ちの悪い絵になっているのに、何百年間もそのまま載せられてきたというのは、異常感覚ではないか…。それはさておき、

端座して背に両手を回し、首を左右に引きながら交互に反らせた背を叩くこと35回。


風湿の邪が停滞して肩・背・胸・腿・膝・脛に疼痛をもたらすため、息切れ、咳、喘息をもよおす。
と。


手を後に回して叩ける背中のエリアとなると、肩甲骨よりも下である。となると、これは腎の系で、いわゆる循環器的失調がこの残暑の季節現われるから、自律神経を鎮めなさいと。
 白露八月節座功

 はくろ。新暦9月7日。


今年は旧暦に閏月をはさんだ(閏6月)ため、節座功がずれて八月節座功を七月にやることになっている。
里ではまだ暑いが、山間の秋は早く、文字通り朝露が草に宿る。
早場米の届く季節になった。
   テキストには「端座して両手を膝に突き、首を回せ」と。まことにシンプルな座功である。回数は左右15回ずつ。

適応症=風邪が腰背部の経絡に滞り、悪寒で震え、人や火を恐れ、木の揺れる音にも驚く。激しい往来寒熱。発汗。鼻血。顔面麻痺。頸部の腫脹。


どう読むか。
腎の疲弊であろう。それが膀胱経の背中全体に広がり、猫背ぎみとなり、姿勢もうつむきの情けない格好になっている。その状況の突破口としての頸の旋回。
秋分八月中座功

しゅうぶん。新暦9月22日。


暑さ寒さも彼岸まで。北国ではもうめっきり「寒く」なったが、南国ではこの季節感が今年も言い得て妙である。
秋の夜長となり、虫の音も涼しげに聞こえる。

今年は9月10日が、春分から数えて二百二十日で、台風の襲うころだが、もう少し後になるか。 
   盤座。両手で耳を塞ぎ、左右に側屈すること15回。


適応症=風湿の邪が側胸、腰、股関節に滞り、水腫が腹、膝、胸に生ず。脚の前面(胃経)が痛み、遺尿、放屁、腹鳴。

これは足の陽経異常の証である。すなわち、胆・膀胱・胃の各経が萎縮する。冷えの季節の兆を見逃すまいと。
 寒露九月節座功

かんろ。新暦10月8日。


一段と寒さを覚える頃。朝晩の冷え込みは晩秋の気配をもよおす。

秋の収穫も、一段落の頃となる。
   両手托天。
ただし、左右交互に押し上げよと。15回。


頭痛、眼痛、頸痛、背痛、痔、瘧疾。これらは風寒の湿邪によると。

肩甲骨が後背部肋骨に貼りついて可動性がなくなる一方、血流が悪くなってくるということであろう。
動作は、肩甲骨の揺さぶりに焦点。
 霜降九月中座功

そうこう。新暦10月23日。


稚内から初雪のたよりが届いたのは数日前。福岡の一昨日は登山していて背中が太陽の熱で焼けるように感じたが、夕べの雨は、初冬の寒さを運び込み、それが東へ移ってこの日各地の天気は大荒れとなった。
明朝東北は、文字通り霜が降りそうだと。
   長座。両手を伸ばして足の爪先を掴み、両足を屈伸すること35回。

風湿のの邪が足腰を冒して諸病を惹起する。…として膀胱経にアクセスしたのがこの導引。


これはちょっと先の、初冬の時期には時宜に適った導引と言えるが、現実にはちょっと早いか。もっとも、北国の山間部ではぴったりなのかも。
 立冬十月節座功

りっとう。新暦11月7日。


木枯らしの季節。木々の葉も落ちて気温も上がらない。空が晴れわたっても陽光に温かさが乏しくなった。
裏日本に、時雨の季節が到来した。
   一方の手で膝を押さえ、その腕の肘ををもう一方の手で引く。(次候の小雪でもまったく同じ説明文。にもかかわらず異なるイラスト)首を旋回して左右を見る。さらに両手で物を受けるようにして上げる。以上を15回。


虚に乗じて邪が胸脇部を侵し、腰痛・喉の渇き・胸のつかえ・吐き気・食滞・耳下腺炎・顔色の濁り・目の充血・側胸〜下腹の痛み…。



これは…解説不能だ。肘を押したり引いたりというのは、心臓の不調を想起させるのだが、上の治病の項目を読むと、疲労困憊症状である。その多くが上半身、肩よりも上の異常である。首を調えるのはある意味、自己治療の最終兵器であるから、可とすべきか。
 小雪十月中座功

しょうせつ。新暦11月22日。


晩秋というより初冬。南国にも、寒さを感じる日が多くなる。といっても、福岡あたりではまだ霜も降りていない。
風のない晴の日はポカポカで、小春日和だ。
    立冬座功と同じ。
一方の手で膝を押さえ、その腕の肘をもう一方の手で引く。

これだけ。回数は15回。

ところが、「適応症」の記述が異なる。

脱肛。風湿の熱毒。婦人の下腹部痛。男性の鼠蹊ヘルニア。遺尿。尿閉。冷え症。
痙攣。ひきつれ。よく恐れる。…など。

この症状は、みな腎虚である。腎虚にもこの肘絞りが効くのか。いい加減なはなしである、とは言うまい。
実はこの、冬のはじめの二節気に同じポーズを続けるよう指示するのと、同様に春のはじめの二節気にも同じポーズを続けるようにとある。同じポーズなのに、適応症が異なるのも、同じである。
これについては、別稿を準備したい。
 大雪十一月節座功

たいせつ。新暦12月7日。


中部地方の山間部を含め関東以北の太平洋岸を除く地方はもうすっかり冬景色、すなわち雪に覆われている。
まさに大雪である。
氷点下にはならなかったが、福岡でも昨日雪が舞った。
   立ち上がって左右の手を持ち上げ、足を左右交互に踏みつけること35回。



風湿の毒が脚・膝を侵す。口が熱く舌が乾き喉が腫れる。
いらいら。心臓の痛み。黄疸。急性腸炎。陰部の湿り。
食欲があるのに食べられない。
人に捕らえられるようで怖い。


動作は、四股踏みと解釈してよいだろう。対応する症状はどうだろう。心腎の不調である。胃腸の「硬直」症状が加わっている。

※座功といいながら立功である。立功は、五月の芒種功以来二度目。この二種のみである。芒種功では上体をのけ反らせた。ここでは足の踏みならしである。立つしかない。
 冬至十一月中座功

とうじ。新暦12月21日。旧暦11月9日。


北半球で、もっとも夜の長い一日。
たしかに夜明けのもっとも早い銚子でも日の出は7時だ。北国では3時半ころにはもう日が傾き、冷え始める。
冷えるのはこれからが本番だが、光は、明日から増え始める。
   長座。拳で膝を押し込むこと25回。



寒湿の邪が背骨と足腰を冒すために嗜眠、冷え、腰痛、胸のつかえ、臍痛、便秘
などをもよおす。



ひざのウラを、膕(ひかがみ)という。ツボは委中。脚の後面を伸縮する縦長の筋群はひざを越えた骨に接続する。膝のウラはそれらの筋肉がちぢんで腱になっている。経絡で言えば、膀胱軽。それが冷えて固くなってさまざまな不調を引き起こすと。
 小寒十二月節座功

しょうかん。新暦1月5日。


向う一月は、一年のうちもっとも寒い季節、寒の内である。
六月の小暑大暑を暑中とまとめて見舞状を交わすように、十二月の寒の内は寒中で、見舞う仕来りがあった。今は年賀状の返礼がわりに寒中見舞状を出したりする。年賀は忌むが見舞いは忌まずか。
昼の長さは冬至で最短だが、日没はその後もどんどん早くなる。新暦1月10日ころがもっとも早い。そうなってようやく光の春の感じが出てくる。
   端座して片手を脚を押さえ、もう一方の腕は托天。同時に首をひねる。左右交互に15回。



営気衛気とも鬱滞して、食してたちまち嘔吐、胃痛、腹脹、げっぷ、食欲不振、下痢、便秘、だる重い、心窩痛。


これは脾胃の異常に対する処方で、八段錦などの臂単挙勢と同種の体操である。
初夏の小満のときにも、同様の導引が示される。
大寒十二月中座功

だいかん。新暦1月20日。


一年のうちでもっとも寒い季節。ただし、次の節は立春。
だから寒さの底に春を宿している、冬の土用である。
実際、とても寒くて、今年は先だって関東地方に降った雪が何日も融けずに、軒下に残っているという。
いいじゃないですか、冬らしくて。 
  両手を後方の床につけて上体を支え、片足は畳み、もう一方は伸展。左右交互に15回。


内気の鬱滞。舌根のこわばりと疼痛。身体が動かせない、臥位を取れない。
股関節・膝関節の腫れ。陰部の痛み。臀部、ふくらはぎ、足背の痛み。

これは鼠蹊部のこわばりでしょう。  
     
     
     
     
     


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