筋診断施術のながれ 
  ●おことわり
施術は、職能的な技法なので、言葉では表現できないところがあります。そこをあえて説明しようとすると、専門的になりすぎたり、細部に拘泥するような愚を冒しがちです。
ここでは、物語風に「治療の現場」をレポートする形で、筋診断の実際を観ていこうと思います。
レポーターは仮名みどり(24歳)。施術は会長(70歳)。患者は仮名誠子(40歳)…ということで。 
 
1. みどりです。きょうは会長先生のお宅をおじゃまして、筋診断を見せていただきます。
患者さんというのは「治療する人、される人」の関係で治療を受ける人をいいますが、筋診断ではご本人も患者と自覚してなんかいません。自分ではおてあげで調整できないので診てもらおうと訪ねてきた「準会員」さんです。つまり、筋診断にそれなりの理解と経験がある「仲間」の一人です。筋診断研究会の会員の中には医業資格を持っている人もいますが、それは例外的に少ないので、被術者も調整してもらうことを通して筋診断を学ぶというスタンスなんですね。
でも、寝たきりの病人とか、赤ちゃんとかにも、筋診断は威力を発揮しますから、施術という視座からレポートするのは、これから学んでみようという人には意味があるということです。
では始まり。患者さんは準会員の女性です。顔色悪い。おなかが痛いのが続いて困ってるそうです。 
 
2.  施術室(といっても臨時のお部屋)は、畳のへやで、薄いマットにシーツ。頭を北向きにして横たわる。マットの西側に先生、東側の座布団二つは患者さんと付き添いの人の席。または次の患者さんの席。つまり、公開治療ということで、あやしいこと、へんなことはしませんよと。
マットに北向きで寝るというのは、地磁気による診断の濁りを排除するためなんだそうです。北向きで診断すると、診断反応がはっきり判るからと。で、先生と患者がマットをはさんでお辞儀。よろしく…と。 
 
3.  先生がどうしました?と訊く。誠子さんがおなかが痛いのが取れない…などと答える。   
4.  短いやりとりのあと、誠子さんはうつ伏せ。そうそう、女性被術者は、スカートだめ、ガードルだめ、裸足になれること。おなかがめくられるような服装でと。おなかは、腹診するため、裸足は足のツボに色片を貼るため。スカートだと、内股の恥骨筋や内転筋を触診しにくいからだそうです。
おなかは、素肌ではなく、上はみぞおち、下はへその下10センチまで薄い下着の上から触れるように。ベルトは外し、左右の腰骨(上前腸骨棘)の高さまで触れるように、だそうです。夏は、わざわざTシャツの胴を切り取った腹巻を着けてもらって、その上から腹診をするんです。
 
5.  うつ伏せになって、最初に骨盤観察。現状把握ですね。体調が悪いときは、必ず骨盤が歪んでいるんだそうです。…ということは調子がいいと骨盤は揃っている?
「調子がいいと揃っているとは断定はできないけれど、治療がうまくいけば、事前に歪んでいた骨盤は揃います」だって。 
  
6.  誠子さんの骨盤は右前短縮でした。先生が誠子さんの膝の外側に足を開いて立ち、しゃがんで手を骨盤に手を置いて観察。脚の長さも足首で観察。症状を聞いて必要なら肩甲骨や後頭骨も観察するそうです。
症状と、この骨格現状把握だけで、相当のことが解るんだって。 
7.  今度は仰向け。そして、上着をめくり下着一枚の状態で腹診。おなかのツボには、内臓のまたは経絡の異状が現れているそうです。
へそを最初に押して、そのあとは次々とツボを押していきます。腹診点です。そこをスッスッスッと押していく。同じことを2回くりかえしてから、あらためて、ここ痛いでしょ、ここも、と確認していく。それが、○経異常?と見当をつけていくことなんです。 
 
8.  それから、最初は 後頭骨から肩、胸、腋、腰、大腿、膝、脛と、両手同時に筋肉を触っていく。これを診断筋操法とか、診断筋の触診といいます。ここまでが前段。
右の写真は、後頸部の肩甲挙筋(胃経の診断筋)の触診。以下触診をつづけて、おおよそ診断の見当をつけて、診断操法を組み立てる。
凝りが強くて、患者も苦痛を自覚するポイントを操法点とします。その痛いところが、色体操法によって消えてしまったら、その色体が現状を好転させ、治癒に導く力を発揮するのだということになります。 
 
9.  誠子さんの腹診では、胃点、大腸点、左胆点、心包点に圧痛。筋診では右前三角筋、肩こり、右外側広筋、左右の内転筋と内側広筋に異常緊張。   
10.  異常点の中から、またはそれ以外の圧痛点を含めて、一点を任意に選択して操作点とするのです。
先生は、心包点を操作点にして、そこに右手指を置き、左手に診断具として色体(6色の四面体ダイス)を持って以下診断操法の開始。
今、心包点を押すと、痛い。指は載せるだけにして、左手に色体を持ち、誠子さんの右手に乗せる。乗せておなかを押す。痛みに変化があるか?
 
 
11.   次いで、誠子さんの左手に、色体を持たせて、またおなかを押す。
右手に持った時と、左手に持った時では、痛みが違うはず。
誠子さんは、右手に持った時、痛くなくなる、ラクになるけど、左に持ったら痛くなる。左はダメと教えてくれる。教えてくれなくたって、おなかの硬直が消えて、指先に感じられたつかえ、かたまり感がなくなってしまうのだから、右側が第一治療経のある側だということが判る。
これを「異常緊張解消反応」というそうです。
 
12.   じゃ、6色の色体のうち、今の身体は何が合っているのか。
6色をつぎつぎに持ち替えて比較してもいいけれど、微妙な違いは判りづらくなるから、手の経の中にあるか、足の経の中にあるかを、その3色をまとめて持ってもらいました。
手の色=白桃赤
足の色=黒青黄
で…、右手に白桃赤を持ったとき、おなかが、弛みました。
13.  (もし、左側に第一治療経があるなら、12と同様に、手の経3色、足の経3色をまとめて持ってもらい、比較検討して手の経か足の経かを決定する。右の上は手の3色を持ったところ、下は足の3色を持ったところ。術者の右手は操作点=心包点に置いて、反応を診る) 
 
14.  心包点を操作点にして、右手の経に第一治療経(点)があると推認できるので、同様の反応が操作点を変えても起こるかどうか、診てみることにしました。
腹診点ではなく、診断筋を操作点にする場合は、9で診た異常緊張のあった診断筋を改めて触診して、先生はもっとも左右差の甚だしい左内転筋を選びました。
左内転筋をつかむと、痛い! 
15.  さあ、この内転筋の緊張圧痛が、右手に手の3色を持ったら、取れるか?   
16.  こうして、3色のうち1色を選ぶ過程で、桃色と決定し、さらに虚と決定し、心包経虚と決まる。   
17.  最後にツボを決定する。要穴は、大陵と内関。比較すると、内関がよい。   
18.  右手の内関に桃色の色片を(三角の頂点を指先に向けて)貼って、あらためて最初の操作点である心包点を押してみる。
痛くない。
これで、第一治療経治療が完成。右心包虚・内関。 
 
19.  こうして、第一治療経(主経)が決定しました。異常の大きさを100とした場合、主経の治療で70以上が解消しなければいけないんだそうです。
残りの30を取るために、共軛経(きょうやくけい)を探す。やりかたは、主経探査とまったく同じ。なので、後略。
…というわけで、診断はおなかのどこにも圧痛がない、凪のおだやかなおなかが得られるまで続く。これでOKと思ったら、伏臥になってもらって、骨盤観察。揃っていれば、診断治療を終了。おじぎ。 
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